さて、今回は株式の「ベータ値」について説明したいと思います。
この記事の目次
株式のベータ値って何?

ベータ値=「どれくらい株価が変動するか」
株式のベータ値というのは、株式市場全体の値動きに対して、その銘柄がどのくらいの比率で変動するのかという概念です。
たとえば、ベータ値の高い銘柄は、株式市場全体よりも株価が激しく動く(ボラティリティが高い)ということになります。
反対に、ベータ値の低い銘柄は、株式市場全体よりも株価がマイルドに動く(ボラティリティが低い)ということです。

ベータ値の計算式
ベータ値の計算方法は簡単です。
ベータ値の計算式
β = 個別銘柄の値動き ÷ 市場全体の値動き
たとえば、市場全体が10%上昇する中で、ある個別銘柄Aが20%上昇していたとしたら、その銘柄のベータ値は2ということになります。
- 株式のベータ値は、株式市場全体に対して、どの程度その個別銘柄が変動するかである。
- 株式のベータ値は、「個別銘柄の値動き ÷ 市場全体の値動き」で計算する。
株式のベータ値を投資に活かすには?

さて、それではこのベータ値という概念をどのように投資に活かすことができるでしょうか。
ベータ値の高い企業の特徴
ベータ値を投資に活かす方法を考えるにあたって、まずはベータ値が高い企業とはどういう企業なのかという点を整理してみましょう。
ベータ値の高い企業にはいくつかの種類があります。
(1)景気の影響を受けやすい企業
世の中には、景気の影響を受けやすい企業と、受けにくい企業があります。
前者を「景気敏感株」、後者を「ディフェンシブ株」と呼びます。
消費者の日常生活に溶け込んでいる消費財、たとえば「アリエール」のような洗剤や、「コカコーラ」のような飲料というのは、景気が悪いからといって、消費者が買わなくなることはありません。「景気が悪いから洗剤を買うのをやめよう」とはならないからです。
こうした企業の株式は、景気が悪い局面にも強いので「ディフェンシブ株」と呼ばれているのです。
一方で、建設や工事に関連するような銘柄や、レジャー系の銘柄、自動車などは、景気に敏感です。
景気が悪く、消費者が財布の紐をしめるとき、家や車といった高価なものは売れにくくなりますし、建設などの投資は控えられます。また、消費者はレジャー施設に遊びに行くのをやめて節約するようになります。
このような企業が「景気敏感株」です。
さて、当たり前のことではありますが、景気の影響を受けやすい「景気敏感株」は、「ディフェンシブ株」と比べて業績が安定しにくいため、ベータ値が高くなる傾向にあります。
(2)中小型株
中小型株は、大型株と比べて、当然ですがお金が流れ込んできたときに株価の上昇幅が大きくなります。逆も然りです。
時価総額が100億円の企業と、1,000億円の企業では、10億円が流れ込んできたときに、前者は時価総額が10%増えるのに対して、後者は1%しか時価総額が増えません。
このように、中小型株は同じお金が入ってきたり、出ていったとしても、大型株と比べて株価の変動が激しくなります。
(3)損益分岐点が高めの企業
損益分岐点が高めの企業もまた、ベータ値が高くなる傾向があります。
以下のようなケースを考えてみてください。
2つの企業を比較してみよう
A社:1年間の売上は約800億円〜約1,200億円。営業コストは約300億円。
B社:1年間の売上は約400億円〜約600億円。営業コストは約300億円。
A社は景気が良いときには約1,200億円の売上があり、景気が悪いときには約800億円の売上がある企業です。営業コストは約300億円で、景気が悪いときでも販管費率は4割弱に抑えられています。
一方で、B社は景気が良いときには約400億円の売上があり、景気が悪いときには約600億円の売上があります。営業コストは同じく約300億円であり、景気が悪いときには販管費が7割以上になります。
さて、それぞれの景気が良いときと悪いときの営業利益の変動率を比較してみましょう。
銘柄A | 銘柄B | |||
好景気 | 不景気 | 好景気 | 不景気 | |
売上 | 1,200億円 | 800億円 | 600億円 | 400億円 |
販管費 | 300億円 | 300億円 | 300億円 | 300億円 |
営業利益 | 900億円 | 500億円 | 300億円 | 100億円 |
好景気÷不景気 | 1.8倍 | 3倍 |
結果はこのようになります。
売上に対する販管費率が低い銘柄Aは、好景気時に不景気時の1.8倍の営業利益にとどまるのに対して、販管費率が高い銘柄Bは好景気時には不景気時の3倍もの営業利益となります。
このように、販管費率が高く、損益分岐点も高めの企業というのは、好景気時に利益が跳ねやすいため、ベータ値が高くなります。
景気好転時に強い「ベータ値」の高い銘柄
さて、これらに共通して言えることは、業績の変動が激しい銘柄ほど、ベータ値が高くなりがちであるということが言えます。
言い換えるなら、ベータ値が高い銘柄というのは、不景気時には市場よりも株価が大きく下がるのに対して、好景気になると業績の改善度合いが大きいために市場よりも株価が上がりやすいのです。
つまり、景気が良くなり、株式市場が上昇相場に入ったときには、ベータ値の高い銘柄へのシフトが有効であると言えます。
- 「景気敏感株」や「中小型株」、「損益分岐点の高い株」のような、業績変動が激しい銘柄はベータ値が高くなりやすい。
- ベータ値が高い銘柄は、景気が良くなり、上昇相場になったときに投資するのが良い。
株式のベータ値を確認する方法

さて、株式のベータ値の計算式はわかりましたが、個別に計算していては大変です。
そこで、株式のベータ値を確認する方法を2つ紹介します。
ベータ値の高い銘柄ランキングを確認する(日本経済新聞)

ベータ値の高い銘柄を業種別にパパッと確認するのに適しているのは、日本経済新聞の「β(ベータ)値高位ランキング」です。
業種ごとにランキング形式で見ることができるため、特定の業種が上昇相場に入ったときに、ベータ値の高い銘柄を見つけて仕込みたい場合などにも適しています。
ランキングの100位までは無料で見ることができるため、ベータ値の高い銘柄を探したい場合であれば、無料でも十分でしょう。
銘柄のベータ値を個別に確認する(kabu-data.info)

kabu-data.infoでは、個別銘柄のベータ値を日足ベース、週足ベース、月足ベースの3種類で確認することができます。
また、期間だけでなく、日経平均株価に対する変動割合で計算したベータ値と、TOPIXに対する変動割合で計算したベータ値を見ることができる点も特徴的です。
- 日経新聞のウェブサイトでは、ベータ値の高い銘柄ランキングが業種別に確認できて便利。
- kabu-data.infoでは、個別銘柄を検索してベータ値を複数パターン確認できる。
キャプテンのひとこと

ベータ値という概念は、そんなに難しいものではないが、知っておくと有効だ。
もしも景気の循環にあわせて投資をするスタイルなら、景気の好転にあわせて投資先をベータ値の高い銘柄に移していくことで、投資成績をアップできるかもしれないぞ!
どうも、キャプテンです!
投資好きな20代サラリーマン。
インデックス投資と米国株で1700万円ほど運用しています。